青森県男女共同参画センターは男女共同参画社会の実現のための多様な活動を展開します

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青森県女性ロールモデル 事例18【斉藤 雅美さん】

どんな道を選んでも
すべてが今につながる経験

分野:就業・キャリアアップ/NPO・ボランティア

あおもりNPOサポートセンター
理事長 斉藤 雅美さん (青森市)

チャレンジのきっかけは?

新しい仕事との出会い
 高校卒業後、青森県警の交通巡視員として勤務していました。結婚・出産後は働きながら育児をするのは難しい状況だったため退職を選択し、14年間専業主婦として過ごしました。
 知人から半年間パートをやってみないかと声がかかり、あおもりNPOサポートセンターに入職。子ども達も手のかからなくなった時期だったので社会復帰にちょうどいいかな、という軽い気持ちでした。
 あおもりNPOサポートセンター(以下ANPOS)は、NPOを支援するNPO法人です。行政や企業の手の届かないサービスを補っているNPOを支えています。ANPOSでの仕事はとても楽しく、公務員時代には経験したことのない分野の方達との出会いが刺激的でした。勤めて1ヶ月も経たないうちに、上司にこれからも働きたいと相談しました。半年間の契約で終わりたくないと思ったからです。当時は行政から委託される事業など次々と大きな仕事に取り組んでいた時期だったので、そのまま正社員になりました。

あおもりNPOサポートセンターを残す決意
 東日本大震災によって世の中が変わり、行政からANPOSへの委託事業が減っていきました。事業収入が満足に得られない状況に陥ったのです。常駐する職員に給与が支払われるのも難しいなか、ひとり、またひとりと辞めていきました。しかし私はANPOSに残りました。これまでNPOの活動を通してつながってきた方々との縁を絶ってしまうことが、もったいないと思ったからです。NPO自体についてももっと知りたい、まだまだ勉強したいという思いも強くありました。
もうANPOSの運営自体を止めてしまおうか、という話も出ましたが「社会課題の解決のために生まれたNPOが、目的を果たす前に無くなってしまうのはおかしい」と思い、ANPOSを残すために理事長に就任しました。

チャレンジのみちのり

ANPOSの再建とダブルワーク
 ANPOS再建のためにいろいろな経費削減を行いました。私自身の報酬を無くし、事務所を変え、常勤職員数もゼロにしました。
時を同じくして、県の非常勤職員として働きはじめました。仕事の内容は誰にでもできる簡単なものでしたが、私は「どんな仕事でも面白いことだと思って取り組もう」という気持ちで楽しみながら仕事に取り組みました。仕事を通じていろいろな方と仲良くなり、とても良い経験ができたと思います。
 県の非常勤職員の雇用期間を満了した後、行政機関の電話相談員の仕事に就きました。実はそれより以前にも、他機関の電話相談員として活動していましたが、これら電話相談員の仕事は日々勉強でした。福祉のことなど様々な制度のことを知っている必要があったからです。現在もその勉強は続けています。

大学講師として経験を活かす
 数年前から非常勤で大学の講義を受けもつようになりました。ANPOSの理事長として「ボランティア活動」という授業を行っています。学生に社会を知ってもらうために、ボランティアだけでなくSDGs、DVの問題、心の健康、福祉、ジェンダーなど私が普段触れているものを授業の題材にしています。授業づくりにはこれまでいろいろな仕事を通して経験したことが活かされています。

チャレンジしてみて

ANPOSを守ることは県民を守ること
 少しずつANPOSに大きな事業の依頼が来るようになりました。時代は流れても途切れることなくNPOや一般社団法人設立の相談も来ます。現在柱となる事業が数本あり、働いた分を報酬としていただけるくらい財政基盤は安定してきました。これからも基盤を固めた上で、県内のNPOを支えるべく運営していきたいと思っています。
 青森県には、県が設置するNPO支援センターがありません。全国的に見ても、自治体が設置するNPO支援施設が無い県はとても少ないです。青森の市民活動への行政の支援がとても少ない現状の中、県民の幸福度を下げないために必要不可欠なNPOを支える機関として、ANPOSという存在を無くしてはならないのです。
 行政と市民、企業など様々なセクターをつなぐハブとして「公設の支援センターを作るべき」という声を上げ続けるために、今はしっかりと基盤を作り上げて運営していくことが必要だと思っています。

家族の理解と変化
 私自身の経験から、女性が働くことについて、家族の理解や協力は大切だと感じています。
 子どもたちは私の仕事を応援してくれています。忙しくて家事まで手が回らなかったときも理解してくれて、本当に助かりました。また、夫も以前はやっていなかった家事を積極的に行うようになりました。働き始めて間もないころの私は、夫が家事をやる姿を見て「共働きの家事分担は当たり前!」と少し強気に思っていました。しかし、次第に「いや、やってもらったら、ありがとうだよね」と思うように。現在はいつも感謝の気持ちをもっています。夫の家事に対する変化もありましたが、私も意地を張っていた当時とは考えが変わったなと思います。

プライベートとの両立の息抜き
 プライベートとの両立で大変だな、と思う時は気持ちを文章にしたり、人に話したりとアウトプットすることを意識しています。アウトプットすることで気持ちがスッと楽になるし、文章にすることは備忘録としても活用できます。同意してくれる人、自分と意見が異なる人、客観的に自分を見てくれる人など、話を聞いてくれた人たちとのやり取りの中で新たな気づきが生まれることもあるので、それも経験として自分のプラスになります。

まだまだやりたいことがある、という豊かさ
 今後ANPOSの一員として、青森県内のNPOの活動が継続していくよう支援していきたいと思っています。その中で地域の課題を自分のこととして捉え、自ら行動できる人たちが増えていく。そんな市民社会を作っていくことが目標です。これからもやりたいことはまだまだあります。やれそうだな、一歩踏み出せそうだなということが目の前にあるということが幸せで豊かなことだと感じますし、ワクワクしています。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

いろいろな立場を経験して今の自分がある
rmodel3-2 警察職員を退職した当時私のまわりでは結婚・出産で家庭に入る人が多くいました。退職していなければ、今ごろはどんな自分だったのだろう?と考えることもあります。でもそれは後悔ではありません。その時の選択肢の中で自分が選んだ道が一番だったと思っています。警察職員としての職歴は、組織の一員として働くこと、誰かのために尽くすことを学び、それは現在でも行政の立場を理解することに繋がっています。
 専業主婦の立場を経験したことで、専業主婦の方々の気持ちも理解することができます。電話相談員がきっかけで学んだ専門的な知識のおかげで、福祉などのNPO支援においてより現実に即した話ができるようになりました。ANPOSの現在の仕事に大いに役立っています。
 これまでの生き方や仕事で経験したことは、間違いなく今に作用していると思います。経験は何一つ無駄にならないと思いますし、今の自分だからこそ見えるものがたくさんあると思います。
どんなきっかけでどんな道を選んでも、自分が豊かな人生だと思えるなら結果オーライです。

(令和5年12月取材)

【プロフィール】
弘前市出身。青森県警察職員を経て、2008年あおもりNPOサポートセンターに入職し、2015年に理事長に就任。NPOの基盤強化に取組み、行政、企業、市民、NPOなど様々な分野をつなぐ活動を行っている。

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