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青森県女性ロールモデル 事例17【岩城利英子さん】

 

原動力は使命感
強い想いで進み続ける

分野:就業・キャリアアップ/起業/専門職・研究職

合同会社 ゆきの木 代表社員
岩城利英子さん (十和田市)

チャレンジのきっかけ


 若い頃は東京で美容師として働いていましたが、酷い手荒れに苦しみました。29歳の時には頭頂部の脱毛を経験しました。30歳を過ぎてからはアトピーを発症し、病院で処方された薬を使ったり、「肌に良い」とされる成分が配合された化粧品を使用したり、食生活からの改善を試みたりと色々プラスするケアを試していました。それでも一向に治る気配はありませんでした。

1つ目の転機 シンプルケアとの出会い
 30代半ば、縁があって働き始めた九州の小さな化粧品会社で「洗う」を基本としたシンプルケアと出会いました。シンプルな成分で洗って、色物と呼ばれるファンデーションや口紅など一般的に使用される化粧品をやめたことで、7~8年かかりましたがアトピーの症状は落ち着き、克服することが出来ました。ここで「シンプルケアの価値」と「肌本来の力のすごさ」を知りました。

2つ目の転機 十和田に帰る決意
 九州の化粧品会社での仕事にやりがいを感じていたので、辞めるつもりはありませんでした。しかし十和田市の実家の父が亡くなったことがきっかけで、私は十和田へのUターンを考え始めました。しかし、青森県には想像していた以上に化粧品会社が少なく、これまでと同じような仕事を続けられる企業がありませんでした。そして悩み行きついた答えが「十和田で小さな化粧品会社の起業」でした。九州の化粧品会社で製造、開発にも携わったことで「できるかもしれない」「チャレンジしてみようかな」と思ったのです。その決意をしたのが41歳の時でした。

チャレンジのみちのり

宝の3年間と石鹸との出会い
 起業を決意した時はすごくパワーがわいてきました。仕事をしながら化粧品製造販売業許可申請に必要な資格取得のための学校を探しました。大学や東京の専門学校などあらゆる学校をリサーチし、出会ったのが北海道の専門学校でした。「起業したい」という強い想いを当時の先生が受け止めてくれたことが決め手でした。43歳で入学し、「化粧品」を専攻しました。はじめは慣れない生活で勉強方法もよくわからず、苦戦することもありましたが「学べるものはしっかり学んで帰る、勉強をしに私は入学したんだ!」という気持ちで頑張りました。独学などと違って教えてくれる先生がいることにありがたさを感じ、勉強漬けの毎日でしたが楽しみながら学ぶことが出来ました。先生やクラスメイトにも恵まれた宝の3年間でした。本当に楽しい思い出として記憶に残っています。そしてその学校での授業で、環境の負荷が少ない洗浄剤としての「石鹸」と出会い、石鹸の研究を始めて独自の石鹸の製法を編み出しました。

十和田に帰り、起業
 2016年(当時47歳)十和田市に帰って「合同会社ゆきの木」を設立しました。商品の開発中に何度か参加したセミナーを通じて青森県産業技術センターという研究機関を紹介していただき、担当の研究員の方へ強い想いを伝えると、快く受けてくださりました。ここで、石鹸の研究にとことん打ち込む共同研究を開始しました。
 そして2017年4月1日、念願の化粧品製造業と化粧品製造販売業の許可を取得。化粧品会社の起業を決意してから7年目で石鹸を販売する段階にたどり着きました。私はここで「石鹸販売のスタートラインに立つことが出来た」と感じました。

チャレンジしてみて

石鹸に対するブレない柱
 肌の弱い人の目線でのもの作りはわたしだからできる!という経験者としての強い思いが原動力です。肌が弱い私自身が使用感に感動する石鹸でなければならないと、原価のことは考えずに使いたい原料で作りたいものを作り上げました。白神山地の水をたくさん配合し、3カ月くらい時間をかけてゆっくり蒸発させていく。出来上がった石鹸はへこんだ形をしていて、成形したら値段が高くなってしまうのでこのまま商品として提供することに決めました。環境にやさしく、お肌にやさしく、人にやさしい、私の想いが全部つまった石鹸。それが2017年12月に発売を開始した商品第1号「雪の泡せっけん」です。
 まずは自社Webショップでの販売を開始しましたが、一向に注文は入りませんでした。次に、対面販売でゆきの木の想いを伝えようとイベントや催事、朝市などで実際にお客様に泡の体験をしてもらいました。SNS発信や友人のクチコミ、起業仲間などの横のつながりもでき、地域のお店にも取り扱っていただくようになりました。それでも2,100円の石鹸は簡単には売れません。
 自己満足だったのかもしれない・・・と何度も思いましたが、それでも石鹸に対してのこだわりは譲れませんでした。自分がそうだったように、無添加の石鹸やシンプルなケアを求めている人がいるに違いないという「使命感」があったからです。イベントやワークショップでの対面販売をひたすら積み重ね、使ってくださっているお客様に想いを伝え続け、地域の方々を中心としたたくさんのお客様から嬉しいお言葉を頂けるようになりました。

念願の全身用せっけんを商品化
 商品第2号は頭から足先まで洗えるせっけん「雪の泡せっけん全身用」でした。これは頭頂部の脱毛を経験した私が最も商品化を目指していたもので、着想から7年かかりました。コロナ禍の2020年4月に販売を開始し、新商品の発表の場としてイベントを計画しましたが、あらゆるイベントは全てキャンセルとなりました。その後もなかなか対面販売での商品の魅力をお伝えすることが出来ず、辛い経験でした。しかし現在は、各販売店の方々のお力添えでじわりじわりと固定のお客様がつくようになり、商品を気に入ってくださるたくさんの方を笑顔にすることができるようになりました。

地産地消と恩返し
 合同会社ゆきの木の「ゆき」は私自身、起業を決意した時に雪国青森出身のため呼ばれていたニックネーム「ゆきんこ」からとりました。「木」は地域に根付いた活動・会社となるようにとの想いからです。「地元の人達に愛してもらえないものが、他で愛されるはずがない」という想いから、今は地元のお客様を最優先に考え活動しています。材料も地元のものを使って、私が商品にすることで、地元でまわっていく。地産地消は野菜だけじゃないと思っています。しかし、これらの活動が最初からできたわけではありません。1人では何もできないということに早くから気づきました。いろいろな体験をして、助けていただいて、「やっぱり青森だな、地元だな」という考えになりました。私は現在もたくさんの人に支えていただき、助けていただいています。「ゆきの木」の活動を長く続け、私を必要とする人にシンプルケアを伝え、笑顔が増えていくことが、私を助けて下さる人への恩返しだと信じています。化粧品の地産地消を目指し、生涯現役!で今できることを邁進していきます。

これからチャレンジする女性へメッセージ

強い想いと覚悟
 これから起業をしたいと考えている人はまず、自分には何ができるだろう、何をやりたいだろうと考える。本当に大変な時になってもやり続けるか考える。分からなければ調べる、出来なければ学ぶ。起業は決して楽ではありません。私はセミナーで繋がった起業仲間達からの失敗談やリスクを聞いて“現実的な課題”として参考にした上で、「それでもやるんだ!!」という強い気持ちで進みました。強い想いと覚悟があれば前進し続けていくことができます。きっと、感謝の気持ちでいっぱいになります。

全ては必要な「過程」
 始めてすぐに1人では何も出来ないと感じていましたが、それでも自分がまず動かなければ何も始まりません。人や会社、研究機関、さまざまな縁に助けられました。動いてみると必要なご縁がつながります。よくお客様にも「岩城さんがずっと肌で悩んでいたのも、これ(ゆきの木としての活動)をやるためだったんだよね」と言われます。私もそう思っています。本当に何が欠けても今の自分は無かったと。
挫けそうになっても成功するまでやり続ければ、それは全部必要な過程です。人間何もかも全て上手くいくわけではないので、何かあってもバネにして「よし頑張ろう」と次に繋げていく。何ひとつ欠けても今の自分にはつながりません。
(令和5年10月取材)

【プロフィール】
十和田市在住。専門学校卒業後、東京、十和田、福岡で美容師として働いた後、福岡の化粧品会社で勤務。その後北海道の専門学校へ入学。2016年合同会社ゆきの木設立。自身の経験から、無添加で環境にも配慮した「ゆきの泡せっけん」をはじめとしてシンプルケアの大切さを発信している。

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