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青森県女性ロールモデル 事例4【漆坂 サユリさん】

とにかくやってみて、体験してみて!

分野: 就業・キャリアアップ/専門職・研究職

株式会社 みどり
 漆坂 サユリさん(十和田市)

 

チャレンジのきっかけは?

★「大きい車に乗りたい」という10代の頃の夢を思い出し・・・
 前職でリストラに遭い、職を探している時、株式会社みどりの男女の運転手募集を見つけました。10代の頃、ダンプの運転手をしていた叔父に何度かダンプに乗せてもらったことがあり、「いつか自分も大きい車を運転したいな」と考えていたことを思い出し、応募してみることにしました。

チャレンジのみちのり

★大型免許もないのに直接会社へ。会社初の女性ダンプ運転手が誕生
 大型ダンプの免許を持っていないのに、運転手の求人票を見て直接会社へ行きました。そして社長と専務の二人と面接をして、面接が終わると1万円札を渡され、「これで長靴と作業服を買って明日から来てください」と言われました。こうして、会社で初めての女性ダンプ運転手として採用されました。
 やはり男性ばかりの職場で、最初は建設業界の言葉も重機の名前も本当に何ひとつ知りませんでしたが、周囲の皆さんが優しく、何でも教えてくれました。現場に行くときも、あちこちに連れて行ってくれ、意外と楽しかったです。3か月間は見習いとして土木作業員の仕事をしながら、その間に大型免許を取って、それからダンプにすぐ乗れるようになりました。

★当時珍しかった女性ダンプ運転手
 ダンプの運転手に転職する時、最初は親が「危ないからダメだ」と反対していましたが、やりたいからと言って押し切りました。
その頃、ダンプに乗っている女性はあまりいなかったので、取引先の方々には「おっ、女の人だ」「女の人が来た」と物珍しそうな反応をされたり、私自身は知らないのに、周辺の会社の人たちはすでに私を知っているようで、声をかけられたりもしました。他には、あまり行かない配達先の男性に「何だ、女が来たのか」「女だととろくてダメなんだよな」と聞こえるように言われたこともありますが、そういうことを気にしていると仕事ができないので、仕事だからと割り切って我慢しました。当時、女性のダンプ運転手はそれだけ珍しい存在でした。
 運転の技術的な面は、最初は大きいので気を付けなければと思い、今も当然気を付けていますが、乗ってみると意外と大丈夫でした。ダンプの車体はトラックより短いので、慣れてくると乗用車感覚で乗れます。また、配達へ行くにも、初めの頃は道が全く分からず、ダンプに乗ってから覚えたことが多いです。未だに知らないところには、配車係が渡してくれる地図を見て行きます。今の配車係の女性は地図だけでなく画像もコピーして教えてくれるので、とても分かりやすく助かっています。

★突然のライフイベントと病気
 実は、ダンプに乗るようになって、すぐに妊娠しました。入社して半年くらいの出来事です。妊娠中は事務の手伝い等をして、その後産休・育休を取って1年後に復帰しました。それからずっとダンプを運転していましたが、今から約8年前、脳腫瘍が見つかり頭の手術をしました。その時、お医者さんに「2年くらい車に乗らない方がいい」と言われ、その間はまた土木作業員をしていました。ヘルメットを被り頭をずっと下げている姿勢が結構辛く、慣れるまでに半年以上かかりました。一緒に働く若い人たちに「重いのでやってちょうだい」「持ってちょうだい」とお願いするなど、みんなを頼りました。
 幸い後遺症もなく順調に回復したので、社長に「ダンプに戻りたいです」と伝え、手術を受けた3年後から、また頑張って乗っています。

★周囲のサポートがあってこそ
 育休から復帰した時、子どもは母に見てもらって、3歳になってから保育園へ入園させました。送り迎えをはじめ、ほとんど何でも夫がやってくれて、両家の母のサポートも、とても助かりました。
 女の子だと、反抗期になるとお父さんと口もきかなくなるという話を聞いたことがあったので、我が家はそうならないように、子どもが小さい時から関わり合いを大事にしてほしいと思っていました。本音としては、夫には子どもが小さいうちにいっぱい面倒見てもらおうという気持ちもありましたね。働く女性にとって子育てのサポートは夫婦双方の父母もそうですが、一番は夫です。私のようなダンプの運転手なら尚更、パートナーの理解と協力が不可欠です。いい夫と姑に巡り会えたなと思っています。

★今も昔も困っている「トイレ問題」
 今も昔も、女性はトイレ問題が一番大変だと思います。現場作業員は、その現場のトイレや途中で立ち寄ることもできますが、運転手は常に移動しなければならないので大変です。ダンプの運転手は1台、2台で移動するならまだしも、ぞろぞろと10数台が砂や土を運ぶ場合には注意が必要です。その時にトイレに行こうとすると、列から外れることになり、順番が変わってきます。トイレに寄ると、山道や狭い道などでダンプ同士が交差できないルートもあります。いずれにしても、限られたところで交差するには運行の列が崩れるので、迷惑をかけないよう我慢して我慢して、昼まで我慢していることも結構あります。
 走るルートにトイレが無い、コンビニが無いこともあります。今もトイレを探しながら運転しています。コンビニや会社まで戻ってくるとか、少し離れている現場事務所に寄るとか、そうしないとトイレに行けないのです。今までもこれからも運転手について回る問題だと思います。特に女性は生理があるし、仮設トイレは冬場だと凍っていて流せないとなると、使うのを遠慮してしまいます。
 ここ最近、女性も一緒に仕事ができるように、少し大きい現場では、女性用のトイレを置いてくれるようになってきました。ただ、小さい車だとパッと止めていけますが、ダンプは大きいので現場の中が作業車で混雑していると止めておくスペースがありません。こればかりは実際ダンプに乗ってやってみないとわからないという感じですね。

現在の状況と今後の目標など

★仕事を続けられる秘訣
 これまで26年間、この仕事を続けてこられたのは「運転するのが好きだから」ということに尽きます。病気を経験して復帰したときに「やっぱり車を運転するのはいいなぁ」と実感しました。やはり好きなんですよね。そして、何より、それを会社や家族が理解してくれていたからだと思います。

★「トイレ問題」に今こそ女性の視点を!
 一番願っているのは、やはりトイレ問題の解決です。設置にお金がかかるし、掃除もしなければいけないので難しい問題であることは重々承知しています。しかし、これが解決したら女性運転手ももっと増えそうな気がしますね。最近は土木女子の活動が活発のようですが、運転手にまでスポットが当たっていないように感じます。「働き方改革」ならぬ「お手洗い改革」が必要ですね。まだ女性用トイレの重要性を把握されていないのかもしれないので、今こそ女性の視点が必要だと感じます。他の地域で進んでいる事例があれば知りたいですね。女性運転手のネットワークがあれば、情報共有もできると思います。

これからチャレンジする女性へメッセージ

★とにかくやってみて、体験してみて!
 現在、「あおもり女性建設技術者ネットワーク会議」で、女性のために働きやすい環境をつくろう!と若者たちが頑張って活動しています。これから少しずつでも女性にとってより良い環境になっていくと思うので、とにかくチャレンジしてほしい。体験してみて続けられるならそのまま続けて、また新しくチャレンジする人たちにバトンタッチできるように頑張っていきましょう。


▲(左)漆坂サユリさん と(右)植村房恵さん(あおもり女性建設技術者ネットワーク会議会長・株式会社みどり工事部土木二課 主任)
(令和2年1月取材)

【プロフィール】
青森県十和田市出身。高校卒業後、書店員、アクセサリー店員を経て平成5年に株式会社みどり運送部へ就職。大型ダンプ運転手。休職期間を含め勤続年数26年。

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