青森県男女共同参画センターは男女共同参画社会の実現のための多様な活動を展開します

青森県男女共同参画センター

相談専用電話
017-732-1022
情報ライブラリー直通電話
017-732-1024
〒030-0822 青森市中央3丁目17番1号
  • 017-732-1085
  • 017-732-1073

青森県女性ロールモデル 事例13【保坂梨恵さん】

自分らしく表現しながら働き続ける

分野:就業・キャリアアップ、起業、農林水産

株式会社グローバルフィールド代表取締役
保坂 梨恵さん (八戸市)

チャレンジのきっかけは?

リケジョが会社人間からワークライフバランスコンサルタントへ
 函館工業高等専門学校で電気工学を学び、電気工学の中でも原子力発電に興味を持ちました。就職の際に志望した企業は、企業実習の時点で女性は受け入れないということで、一度ジェンダーの壁にはじかれたこともあります。先輩から「原子力業界を志望するのであれば、日本原燃も良いのでは」と薦められインターンシップを経て、平成16年日本原燃株式会社に入社しました。仕事の内容は視察で来た方への説明や案内、再処理工場全体に関する会議運営、役所への運転状況説明など、技術職でも人とのコミュニケーションや調整役の仕事が多く、20代は残業や休日出勤も厭わない会社人間でした。
 30代間近になり、会社の中でロールモデルになる女性の先輩がいなかったこともあり、「このままこの会社で働き続けられるのか?」と疑問に思うようになった頃、小室淑恵さんの著書を通してワークライフバランスという言葉と出会い、ワークライフバランスコンサルタントの資格を取得しました。青森県がもっと豊かに働ける環境になるためにはどうしたらいいのかと考え、その頃からいずれ退職し「起業」することを考え始めました。

チャレンジのみちのり

さまざまな学びから生まれた出会いとビジネス
 20代後半から退職するまでの数年間は起業を志し、会社で培った時間管理術をフルに活用して、様々なことに挑戦していました。ワークライフバランスコンサルタントの資格取得もそうですが、各種勉強会やビジネスプランコンテストに応募し、自分のプランを他人に話すことを行いながら、どのような方法があるのか探っていました。青森県の青森ブランドのビジネスプランコンテストに応募したときは、リモートワークを主体とした親子で夏休みにワーケーションを楽しむという内容の提案をしました。その当時はリモートワーク自体新しい取組みだったと思います。
 その他にも、カウンセラーや整体師などの学びをする中で、いろんな方に出会い良いビジネスのヒントをいただき、「女性活躍に関するイベントの開催」「リモートワークでの事務作業代行」を事業の柱とし、平成29年、退職と同時に「あおもり働き方研究所」を起業しました。

代表取締役就任と経営へ
 起業して間もない頃、株式会社グローバルフィールド(以下「グローバルフィールド」)は当時の結婚相手の家の事業で、東日本大震災以降、他の企業が経営を引き取っていました。2018年に創業家に事業が戻ってくることとなり、義両親は高齢、当時の夫も経営は難しく、義弟と経営を引き取ってくださった企業の社長の後押しがあり代表取締役に就任しました。その二人に以後も相談できる体制があるということもあり、不安を感じることなく即答で引受けることを決めました。
 蓋をあけてみたら良い商品を扱っているにも関わらず、設備の老朽化や売上の低迷など必ずしも良いことばかりではなく、経費削減など取り組まなければいけない状況でした。そのとき、日本原燃時代に経験した品質保証、業務改善のノウハウや、ワークライフバランスコンサルタントの学びがあったことで、コンサル的な視点で物を見ることができたのは強味となりました。

チャレンジしてみて

信頼できるスタッフとこれからの取組み
 あおもり働き方研究所は、起業した翌年から、グローバルフィールドの事業がメインになってしまったため、あまり手をかけられず、今後もっとしっかりとやっていきたいなと思っています。これまでは「県内の働く人と企業を支える事業」を行いたいと考えていましたが、「eスポーツ」「原子力業界におけるダイバーシティ」「リモートワーク」をキーワードに再整理を行っているところです。
 現在スタッフは青森市と八戸市に1人ずつ。デザインやeスポーツを担当しているスタッフと私の秘書的な役割や事務仕事を得意としているスタッフがいます。フルリモートなので、新型コロナウイルスの流行もあり、3人で顔を合わせたことはまだありません(笑)。元々同じ職場だったり、知り合いからの紹介であったりということで信頼関係があり、フルリモートだからといって、困ったということはありません。
 eスポーツでは、青森市のスタッフが中心になって体験会を青森市内で月1回、定期的に開催しています。今は格闘技とか、スポーツ系のゲームの人気がありますが、わたしたちは、ぷよぷよ(もしくはパズルゲーム)をメインに据え、eスポーツを通じて、挨拶の大切さや相手を尊重する姿勢などを伝えていきたいと思っています。
 原子力業界におけるダイバーシティについては、下北、県南エリアでは、給料を上げても、通勤時間の問題などがあり人が集まらないという状況があります。そこで、事務的な作業をリモートでできないか提案をし、働きやすく、しかもちょっと働きたいと思っている人も仕事ができるような環境を作りたいです。細かなニーズに対応できる雇用を生み出すことで、多様な働き方を実現し、周辺エリアの人口流出の減少や女性活躍、通勤時の渋滞回避による環境負荷低減などにも貢献できるのではないかと考えています。それには、ひとつの企業が取り組めばよいというものではないため、自治体としても広域での連携がより一層重要になってくるのではないかと思います。

リモートワークを活かし事業も人もつなげていく
 ダイバーシティの取組もそうですが、リモートワークの活用を更に進めていきたいと考えています。現在、グローバルフィールドの事務の一部を、あおもり働き方研究所のスタッフに任せており、ノーコードのアプリを利用して開発や報告書作成などを実施しています。ノーコードとは、特別なプログラム言語を知らなくても作業ができるもので、わたしたちが利用しているものは、その場にいなくても必要な最新のデータを共有できるようになっています。データの入力は全部現場の人間がやり、八戸にいるスタッフがそのデータを利用して様々な書類作成などをしています。それまでは、紙で上がってきた書類をやりとりしていたのですが、今はそれをしなくても良くなり、仕事の効率も上がりました。

五戸町の産品との出会い
 グローバルフィールドの事業を通し、五戸町と関わる中で、地域の良い商品、良い素材との出会いもありました。しかし、五戸町には良いものがたくさんありますが、「県外から注文が入っても通販サイトを持っていないので決済の仕方が難しい」「ひとつひとつが小さくPRがむずかしい」など声があり、五戸町の産品をとりまとめて紹介することをコンセプトとして「五戸町地域商社設立準備委員会」を設立しました。
 設立準備委員会で今後更に展開していきたいのが、商品販売です。こちらも既存のプラットフォームを利用し、受注生産や在庫の保管など、負担がない形で進めています。五戸町で「おんこちゃん」というキャラクターがありますが、それを使用していろいろ商品を作っています。季節に合わせたものなど、どんな商品を作成するかスタッフと話しあう楽しみがあり、少しずつですが収益もあがっています。
 五戸町には「如空」と「菊駒」という2大酒造があり、「馬肉」「青森シャモロック」「倉石牛」「与助の牛」と美味しいお肉もあります。お酒とお肉など、地域のおいしい食べ物をセットにして販売することや、五戸町の産品を集めたお中元、お歳暮、地域ならではの魅力的な商品を魅力的な生産者の方たちと一緒に紹介していきたいです。そうすることで地域の収入アップにつながっていくのではないかと期待しています。
 他にも、あまり利用されていない建物をテレワークの拠点にして、県外の方にワーケーションとしてPRして観光の面でも形にできたらと計画をすすめているところです。せっかくの施設なので有効活用できるよう、良い企画をご提案できるようにしていきたいです。そして、いずれは五戸町地域商社設立準備委員会の事務局を構えたいです。

3つの取組みをバランスよくこなして
 グローバルフィールドの代表取締役に就任してから4年目になり、ようやく長期スパンでの計画立案(農場の移転など)など、だいぶ目途が立ち始めてきました。大手のギフト商品や海外輸出なども出てきているので、青森シャモロックの更なる知名度UPに繋げたいです。これまでは、グローバルフィールドの事業に8割くらい時間もチカラも注いできましたが、あおもり働き方研究所と五戸町地域商社設立準備委員会にようやく手を掛けられるようになってきたところです。3つの取組みは特色がちがいますが、それぞれが境目なくリンクしながら進んでいます。
 今年は私自身初めての出産を控えていて、まだまだ未経験のことがあると実感しているところです。産休を取得予定ですが、それぞれの仕事はすでにフルリモートでできるようにシステムを作っているので不安はあまりありません。ただし、「それって休みなんですか?」とならないようにバランスよく時間を使っていきたいです。これからも、まだまだやれそうなことがあるというところです。

これからチャレンジする女性たちへメッセージ

怒りをエネルギーに
 残念ながら、まだまだ県内において女性が目立つことをすると叩かれることや足を引っ張られることが多いと感じています。自分自身「出る杭打たれるタイプ」だったので、会社員のころから何度もぶつかってきました(笑)。そんな時に「あいつ、むかつく~~~」と愚痴で終わらせるのではなく、行動に移すことが大事だと感じています。今も正直に言うと、会社員のときよりも面倒なことは多いです。意見が衝突して分かり合えないときもありますが、そこからどうしたらいいだろうと考えていくことで、怒りもエネルギーに変わって、自分や物事を動かしていく原動力になります。もちろんただ声を挙げるのではなく、時には根回し、交渉、データ分析、瞬発力を駆使することも必要なので、そのあたりのチカラをつけていくと自分のやりたいことの実現が近づいてくるのではないでしょうか。

「起業」だけが正解じゃない
 巷では女性起業家を増やそうという取り組みが多いですね。結果的に自分は起業しているけれど、順風満帆かといえばそうではないときもありますし、まだ途上のところもあります。私はたまたま組織の中では大人しくはできなかったタイプだということで、普通に社員として働く道も模索してみたうえでの選択だったといえます。
 起業というと華やかなイメージがあるけれど、それをめざすというよりも自分がどうやったら働きやすい場所で働き続けられるかということが大切だと思います。人には向き不向きもありますし、むしろ組織の中で活躍していく女性、組織の中で活きる女性が増えるのも重要です。外からだけでは中々変わりません。企業側も「女性が長く安心して働き続けられる」そういう取り組みが必要ではないでしょうか。起業する人、組織の中で活躍する人、いろんな選び方があるということを示せたらいいですね。

生物学的に「女性」だというだけ
 「女性だから」「女性だし」であきらめる必要は全くないです。女性だから細かいところに気づいて当然、優しくて当然と思われることがありますが、そんなことを言われたら私はたぶん女性という括りに入っていないと思います。まさに生物学的に、戸籍上女性だというだけで、中身は全然違うって周りからも言われます。そういう時は「生物学的に女性ってだけです」と心の中で言うようにしています。(たまにぽろっと出ちゃうこともありますが…(笑))
 女性という固定されたイメージで評価されるのではなく能力でみてもらえるようになるといいですし、わたしたち自身もそのような固定されたイメージに左右されず、「何をしたいか」「どんなことを考えているか」自分らしく表現しながら過ごすことが大切だと思います。
 体力では男性に劣ることもありますが、その分、「別な力(知力、財力など)」を鍛えて、どのように進んでいくことが自分にとって一番働き続けやすいのかをイメージすることをお勧めします。
(令和4年5月取材)

【プロフィール】
函館工業高等専門学校卒業後、日本原燃株式会社に入社。平成29年あおもり働き方研究所設立。平成30年から株式会社グローバルフィールド代表取締役。令和4年五戸町地域商社設立準備委員会設立。

メインページへ
次のページ

このページのトップへ