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青森県女性ロールモデル 事例14【久慈美穂さん】

自由な発想で、生き方も考え方もデザインできる
小さな成功体験を積み重ねて

分野:就業・キャリアアップ、起業、まちづくり

Misawa Art Project代表 and more代表取締役
久慈 美穂さん (三沢市)

チャレンジのきっかけ

「自分が何を得たいか…」働く意義を考えはじめる
 結婚前は医療事務の仕事をしていました。その頃は、雇われる以外に収入を得る方法を考えることもなく、毎月給料が入ってくるのがあたり前だと考えて過ごしていました。その後、三沢公共職業安定所で、生活困窮などの問題を抱える方の求職相談の仕事につき、そこで出会った先輩から「時給だと思って働いていると、自分の学びにならないし、成長もない。そんな人生楽しくない。自分が何を得たいか考えながら仕事をしてみたら。」と言われ、仕事に対する価値観の違いに衝撃をうけました。そこから働くことの意義について考えるようになりました。

チャレンジのみちのり

新しい経験と抱えたフラストレーション
 次に勤めた三沢市雇用創造推進協議会での仕事が私にとって大きな転機となったように感じます。主な仕事はセミナーを企画することで、そこで、企画書の書き方、講師の先生との交渉や依頼の仕方など、これまで経験したことがないことを勉強させていただきました。
 仕事に慣れてくると、「お客さんや関わる人により喜んでいただけるように」と考えて提案するようになりました。しかし決裁権のある人から理解を得られなければ実現することは難しく、上司に伝える方法が分からなかった未熟さもあり、フラストレーションを抱えることが多くなりました。今振り返ると、自分は「こうあるべき」という気持ちが強かったようです。自分の中でこうしたいというイメージがあって、それを譲りたくない気持ちに折り合いをつけることがとても難しかったです。
 解決の糸口になったのは、セミナーでの学びや講師の言葉からでした。心理学の講師の言葉がヒントになったこともありましたし、起業のためのセミナーでチームビルディングの考えが役に立ったこともありました。企画する側でしたが、講座に関わることで間接的に自分の学びや力になり、自分の気持ちに落とし込めるようになったように感じます。
 ある講座で「それぞれの個性を生かして地域をよくしていこう」というお話しを聞きましたが、当時の私はその言葉の意味を理解することができず「それってわがままじゃないの…」と思っていました。しかし、学びを重ねるうちに、自分自身の内面の変化もあり、自分は経験してきたことしか知らないけれど、いろいろな人の意見ややり方を聞くことで、自分の視野を広げることができ、多くの人に興味を持ってもらえるものを創ることができると気づくことができました。時間はかかりましたが、そういう考え方が「それぞれの個性を生かして」ということなのだと理解できるようになりました。

やりがいのある仕事と仲間との出会い
 セミナーのひとつに「イベントコーディネーター養成講座」という企画がありました。数カ月にわたって受講し、講座の最後は商工会や三沢市役所の方たちにプレゼンし講評をいただくものでした。事務局として企画運営に関わりながら、皆さんと一緒に受講させていただきました。受講者が興味のある分野に分かれてグループとなり、ひとつのイベントを企画することを通じて、色々な方と意見交換しながら、創り上げていく過程がとても楽しく、その後の活動につながる仲間を得る機会になりました。
 その時のご縁で、商工会や三沢市役所の方たちと話しをしている中で、「何かやりたいイベントない?」と聞かれたことがありました。三沢市は街中での冬のイベントがないので、みんなが楽しめるような「クリスマスイベント」などあったら楽しいのではないかと話すと、皆さんも共感してくださり、すぐに企画書を出すことになりました。しかし、その頃の私は講座の企画はしていましたが、イベントの企画は養成講座で習ったばかり。三沢市役所の方にも相談しながら、無我夢中で取り組み企画書の完成にこぎつけました。その後、無事に通った企画を実施するなら団体が必要と助言され、養成講座の仲間に声をかけ一緒に参加してくれる人を募集し、Misawa Art Projectを設立しました。
 そのころは本当に忙しく、バタバタという言葉がふさわしかったと思いますが、「やってみたい」という気持ちが大きく、イメージしていたものが実現していくのがとても楽しかったです。

自分たちが動くことで街が変わっていく
 Misawa Art Projectは、三沢市を拠点に市民団体として活動しています。人と地域をつなぐイベント企画や運営、地域活性化団体の企画サポート、女性起業家のスタートアップ支援やシェアオフィス「and more」運営など、人や地域をコミュニケーションを通してデザイン、プロデュースしています。立ち上げ当初は、企画書を作成するために相談に乗っていただいた方が代表をしていましたが、現在は私が代表を務めています。
 スタートした頃は、ママカフェなど子育て世代の居場所づくりを通年のイベントとして開催し、子ども向けの体験イベントとして商店街をインタビューして撮影する「子どもカメラマンの夏」など様々な企画を開催しては、地域のにぎわいづくりに取り組んできました。その活動を見た三沢市以外の行政の方たちと話すうちに、少しずつ「仕事」として意識するようになっていきました。また、活動を通じてつながった、講師の皆さんをはじめとするいろいろな人から、依頼を受けたり、声をかけていただくようになり、まちづくりに関わる仕事を「本業」としてやってみたいという気持ちが強くなっていきました。自分たちが動くことで街が変わっていくことを、日々感じられたことも魅力のひとつでした。
 三沢市雇用創造推進協議会の退職と同時に、これまでの活動を本格的に自分の仕事として、個人事業and moreがスタートしました。令和2年4月にシェアオフィスand moreを立ち上げ、令和4年6月には法人化。株式会社and more代表取締役に就任しました。

チャレンジしてみて

やりたいことを形にして
 and moreをオフィスとして利用しているのは法人代表者や個人事業主の5人の女性たちです。業種も様々で、月に1回みんなで集まって、それぞれの悩み事をシェアしたりアドバイスをもらったりする時間を作っています。私は、普段は一人で仕事をし、事業ごとに必要に応じてお手伝いしていただく方と委託契約をしながら進めています。今は図書館のリノベーションに向けて、住民や子育て世代の方からヒアリングをしてまとめたり、設計士さんたちと一緒に設計図の作成を進めたりしています。
 法人化に当たっては「本当にこれでいいのだろうか」と悩む部分もありました。1年くらい「やめようかな、でもやろうかな…」と何度も大きな感情の波が押し寄せました。県のスタートアップアテンダントという資格を取得していたため、法人化について知識があると思われているのではないかと、改めて相談することに気が引けてしまった時もありました。そんな中、既に起業している先輩の方々から「やったらいいよ」と背中を押してもらい、気持ちも整い法人化を実現しました。
 今後はキャリアデザインスクールを開催したいと思い、昨年度、今後の参考にするため試行的に受講生を募集してみました。そこから、受講生の方たちが何を求めているか、必要としているスキルは何かなど、今後、この事業を進めていくうえで必要になる基本の「キ」を知ることができました。参加してくださった方々は起業とか就職という明確な目的よりも、自分のスキルやそれ以外のことでも気軽に相談できる環境を求めているようでした。色々な情報が集まる場にしていけたら良いのかなと、新たにイメージを膨らませながら、1期生の募集に向けてカリキュラムを組立てているところです。
 今年度は、新たに県内外の大学生のインターンの受け入れをする予定で、今後打合せなどしながら進めていくのですが、どんなふうになるのか初めてのことで今からワクワクしています。

小さな成功体験を積み重ねて
 Misawa Art Projectの設立以前から、私自身は充分に力を持っていたわけではありません。勤めているときは、上司にどうやって自分の企画を伝えるか、また、思い通りにいかない企画を諦めることができず悔しい思いや苦しさを抱えることもありました。and moreの法人化が良い例ですが「やるか」「やめるか」自分の経験だけで判断することは可能性を狭めてしまうと思います。壁にぶつかるような時にも、講座や出会った人たちの考え方、意見を通して新しい発見や気づきで自分の中に変化を起こすことができました。
 大型のイベントが立て続けにある時は迷っている暇がないときもあります。とにかくやらなければと走り続け、終わってから振り返ると「ここはあの人の意見を聞いておいて良かった」とか「あそこは妥協しなくて良かった」と一つひとつ大切な経験となって自分の中に残ります。それが成功体験だと思いますし、積み重ねることで確実に自分の力になっていくように感じます。やらなかったことを後悔するよりも、やった方が何かを得ることができるのだと思います。
 そう考えると、全てのことに可能性が秘められているのかもしれません。チャレンジしたからこそ見えたもの、経験したからこそ得た感覚というものが増えていくことは大切なことです。もちろんチャレンジしたあと「これは違ったかな~」ということもたくさんありました。それでもやってみなければわからなかったこと。これからも課題をみつけたら、そこにチャレンジし続けることは私らしさかもしれません。

これからチャレンジする女性へメッセージ

自分をみつめて、古い考え方から自由に
 女性たちはわりと自分のやりたいことを我慢している方が多いと感じています。子育て、夫のこと、同居しているのであれば義理のご両親など、様々な関係の中でやりたいことを遠慮したり、我慢をしている方がまだまだ多くいるのではないでしょうか。そういう話を聞くたびに「もったいないな」と感じています。今我慢をしていたら、そのまま人生を過ごしてしまうかもしれないし、チャレンジしてもいいことに気づかないままかもしれません。私が先輩からかけられた「自分が何を得たいか」という言葉から考えはじめたように、少し立ち止まって「自分は何がしたいんだろう」とか「本当の自分らしさって何だろう」と考える時間があってもいいかなと思います。
 夫は比較的家事や子育てには協力的でした。それでも、私も子どもが小さい頃は我慢をしていましたし、パートからフルタイムに働き方を変えようと思ったとき、夫に「正社員というか、フルタイムで働かないかって言われているんだけど、どう?大丈夫かな?」と承諾を求めていました。今考えると「それって聞く必要があったのか」と思うけれど、その頃の自分は、男性は働いて家族を養う、女性は子育てや家庭のことをやるという考え方に無意識のうちに影響を受けていたのかもしれません。パートからフルタイムに働き方を変えることひとつとってもなかなか思うようにはいかないこともありました。
 それでも、自分のやりたいことを選んで進んでいくうちに、周りの人も理解して応援してくれるようになりました。それにはやはり「何のためにそれをやりたいのか」自分の気持ちを明確にして素直に伝えることが大切なのではないかと思います。

自分の可能性を自分で決めない
 私がそうであったように、無意識に男女の役割の影響を受けている方はたくさんいるかもしれません。でも、その考え方が全ての人にあてはまるかといえばそうではないのでは…。住んでいる地域、家族構成、暮らし方、それぞれ違うので、男女で分けるのではなく色々な考え方や役割があっていいと思います。
 女性たちがそのような考え方の中で「女だからこれをやらなければ」と自分自身を制限してしまうことは残念なことです。自分で可能性を決めてしまわず、伝えたい相手とコミュニケーションをとり続け、自分にできること、相手ができることを確認していくことで、新たな役割を発見していけるのではないでしょうか。
 「自分らしさ」を探し続けること、そして、「らしさ」を伝え続けることを諦めないでほしいですね。
(令和4年5月取材)

【プロフィール】
三沢市在住。結婚後、三沢公共職業安定所、三沢市雇用創造推進協議会勤務。平成24年Misawa Art Project設立、平成30年より代表。平成28年and more設立、令和4年6月より株式会社and more代表取締役。

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