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青森県女性ロールモデル 事例9【久保 里砂子さん】

もっとこうだったらいいなと思うことを、妥協せず本気で取り組んでみてください。

分野:起業、まちづくり、防災、農林水産

合同会社むっつのたね代表社員
 久保 里砂子さん(むつ市)

チャレンジのきっかけは?

生活に身近なことを取り組む仕事がしたい
高校まで地元弘前市で過ごし、大学入学を機に東京へ移り住みました。大学で家政学部被服学科を専攻し、生活に身近なことについて取り組む仕事がしたいと思い、卒業後に商品科学研究所に就職しました。そこでは、生活者視点で2,000人の主婦モニターを対象としたセミナーを開催したり、商品テストを行ったりしていました。そして、行政、メーカーなどに商品やサービスの改善提案をしていました。その後、組織の統合、再編があり、セゾン総合研究所で「まちづくり」について取り組むようになりました。

「まちづくり」の研究報告よりも実践する人になりたい
今では、まちづくりというと商店街の活性化のことなどをイメージできると思いますが、1990年代頃は「まちづくりって何?」という感じでした。さまざまな地域活動をしているところや商店街の人に話を聞きに行って、先進的な事例を紹介、提案など行っていました。しかし、こうした調査研究を続けるうちに、報告書を書くだけでは、「街は動かない」と思うようになりました。商店街や地域づくりに関して「自分で実践できることをしたい」と思い、退職することを決めました。

チャレンジのみちのり

早稲田商店会を中心にさまざまな切り口から地域活性化に取り組んだ
退職後、東京に残り住まいの近くにある早稲田商店会を中心に、フリーランスとして活動を始めました。活動を通じて商店会の人たちや大学生、高校生たちが、高齢者や子ども、学校や消防団など地域のことを考えて活動し、地方よりも地域の人たちの関係が濃いと感じることもありました。
さまざま取り組んだ中でも「まちゼミ」という取組は、商店街の店主の方が講師となり、専門性を活かしたその道のプロならではの知識を無料で教えるミニ講座で、街全体がカルチャースクールのようです。モノを買わなくても、お客さんは専門的な話を聞きにくることができ、店主も知識を教える「先生」となって、コミュニケーションを図ることで、双方にとってメリットがありました。また、店を知ってもらい、商店街に人が訪れる先進的な取組で、人が集まる、動くことで街は活性化していくのだと気づきました。この取組は全国各地で広がっています。
このほかにも、環境、防災、地域コミュニティ、地域連携を切り口にした商店街活性化の取組を実践しました。次々に新しいことに取り組めたのも、フリーランスという立場や、東京だからできたことかもしれません。

「街の元気づくりコーディネーター」として東京から地方へ
このようなさまざまな取組を実践していくうちに、全国各地の商店街などから声がかかるようになり、商店街のアドバイザーとして各地で調査業務やプロジェクトを商店街や地域の方々と連携して行うようになりました。また、島根県松江市の中心市街地活性化協議会のタウンマネージャーとして、商店街活性化、地域連携、地域づくりなどの各種事業や個店指導などを6年間にわたって行いました。そのほか、同じ時期に全国の食材PRと郷土料理、ご当地自慢で地域交流のできるコミュニティサロン「全国うまいもの交流サロン『なみへい』」の地域連携プロデューサーも担いました。
東京にいると各地の美味しいものが集まってきて、「この前食べたものが美味しかったけど、こっちも美味しい」、「これもそれも日本一」と思うことがあります。しかし、私は青森出身なので、「りんご」を見た瞬間に青森だと思うし、青森のりんごが一番美味しいと感じます。このような気持ちは出身地や住んでいたことがある土地、家族や親戚がいるなど特別な地域に対して強くなると思います。そうした地方との関わりを一人ひとりが持って、「関係人口」を拡大しないと、東京でモノを売るにしても地方は勝ち続けられないと思います。

思いがけず叶った青森への移住
私自身も地方との関わりを考えるようになり、東京と松江の「2地域居住」をしていた頃、ふと、弘前で一人暮らす母のことが気にかかりました。母が元気なうちはよくても、病気で体が悪くなってから私が帰ることになると、介護をしながら仕事を探すのも制限があるし、お互い大変だと思いました。そうした時にたまたまご縁があって、青森県内に勤務している方と結婚することなり、むつ市へ移住しました。故郷のことが気になっていましたが、まさか結婚で青森へ戻ることになるとは思ってもいませんでした。

下北でまちづくりや食育の活動を開始
2013年にむつ市に移住するまで、下北半島には足を踏み入れたことがありませんでした。津軽とも南部とも違う独自の文化があり、まるで知らない世界のように感じました。三方を海に囲まれているため、魚は美味しいし、野菜も近くのものが手に入るので、ちょうどよい住み心地だと思っています。
下北にはこれまでの商店街活性化などでつながりのある方がいて、その方の紹介で「下北半島食べる通信」という食材が付録となっている情報誌の発行を始めました。第1号は風間浦村の布海苔を取り上げ、生産者の紹介や料理人による食材のレシピなどを掲載しました。その後も、海峡サーモンやトゲクリガニ、夏秋いちご、焼干など地元のさまざまな食材を取り上げました。また、津軽海峡マグロ女子会の寄り道旅をむつ市でも実施しました。そのほか、むつ市でも「まちゼミ」の取組を始めたいと思い、市の商工担当課や知っているお店の人たちに声をかけて回りました。初めは「あなたは誰?」と思われましたが、とにかく動き回って、むつ市でも「まちゼミ」を始めることができました。

チャレンジしてみて

むつ市で拠点づくりのため会社を起業
しかしながら、むつ市での様々な事業を通じて、フリーランスとして東京ではできたことが、ここでは提案を仕事につなげていくことが難しいと感じました。
同じ頃、夫が勤務先を退職しましたが、このままむつ市に住むことを決め、市内で拠点づくりをしようと思いました。足場をもって、取り組んでいきたいと思い、合同会社むっつのたねを起業しました。

一部分に特化しない「食」を切り口にした地域活性化
下北の最も素晴らしい魅力は「食」だと感じ、「食」を切り口にした活性化支援を主軸にさまざまなことに取り組んでいます。「食」は生産者として「作る」ことや、それを「売る」こと、「健康」という切り口や「楽しむ」ことなど幅がとても広いです。
例えば、「食育」で、「野菜を350グラム毎日食べましょう」と言われても、食べる量を目標にするだけではつまらないし、意識しないと難しいのではないでしょうか。私は農作業体験会をやっています。一緒に農作業をしながら生産者の話を聞き、野菜の食べ方なども伺います。帰りに収穫した畑の野菜をたくさんもらって帰ります。楽しんで農作業をして、スーパーでは買わないような桁違いの量の野菜を持って帰る。持って帰って調理して食べる。その結果が「野菜をたくさん食べる」ことになります。
食育といっても単なる栄養指導ではなく、地元の野菜の味と農家の仕事を知ってもらうこの取組は、研究所に勤務していた時からやってきた「生活者視点」の発想と、東京で商店街の活動をしていたときにあれもこれもとやってきた、「つなげる」という発想で、これからも楽しくやっていければいいなぁと思っています。

「援農ボランティア」で農家支援
第1次産業従事者は今後ますます減少し、国産の食べ物は激減していくと予想されます。一方、健康と楽しみという面からも、食を絡めた取組がますます重要になると考えています。そうした中、農作業を手伝う「援農ボランティア」を募り、農家を支援する活動も始めました。就農やインターンではハードルが高いけれども、ちょっと農作業を体験してみたいという人が農繁期に手伝う取組ですが、大事な労働力になることがわかりました。
参加者の中には、休日に農家の手伝いを通して、土に触れることが「楽しい」と感じ、レジャー感覚で取り組んでいる人もいます。生産者の皆さんも、「ボランティアだと、無報酬だから申し訳ない」、「ボランティアでやりたい奇特な人がいるの?」と思っていたようですが、時間があってお役に立てるなら手伝いたいと思う人もいるし、いろんな思いがあって農業を体験してみたいという人もいて、さまざまなマッチングができたと思います。参加した高校生が農業に興味を持って、農業関連の学校に進学する事例もありました。生産者の皆さんも一定の効果を感じたようで、今後はこの援農ボランティアを仕組化して、取り組めるようにしたいと思っています。

拠点づくりで夢は広がる
東京の商店街での取組は、今は「食」や「地域活動」にフィールドを移し、シェアオフィスとレンタルスペースを兼ね備えた「アクティブフィールドむっつのたね」の拠点づくりへとつなげています。拠点には厨房を備え、料理教室や茶話会、さまざまな研修会やイベントなども開催したいと考えています。また、この拠点を使う人や団体も増やし、その方たちのネットワークもつくっていけたらと思います。そして、オンラインで他地域の方々とのネットワークづくりをしたいと思います。
何かやりたいときに必要なのは、場所(場)、発信力(伝える力)、協力者(人のつながり)の3つで、拠点を活かし、それらのサポートをしていきたいと思います。人が動き出す、そして次の動きにつなげる、さまざまな人が動くきっかけをつくり、それをつなげていく商店街の機能を集約したような拠点をつくることで、街はどんどんよくなっていくと思います。
防災の活動をしていた時に、「地域がしっかりしていないと大変なことになる」と神戸で被災した方が言っていました。私は防災士の資格を持っているので、防災に関する活動も展開していきたいと考えています。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

好きなこと、楽しいと思うことをする、もっとこうだったらいいなと思うことを、妥協せず本気で取り組んでみてください。
自分が求めていることは、他にも求めている人がいて、周りの声を聴きながらやっていくと、それが仕事になります。
女性にはいろいろな働き方があります。経営者にもなれるし、フルタイムでも、パートタイムでも、家庭生活を中心にした働き方など、自分や家族の状況に合わせたワークとライフを楽しんでください。私もこれからさまざまな働き方をサポートする場をつくっていきたいと思います。
(令和2年6月取材)

【プロフィール】
青森県弘前市出身。大学卒業後、商品科学研究所、セゾン総合研究所で生活者視点での商品・サービスや街づくりの調査研究を担当。その後フリーランスとなり東京の商店街を中心に街の元気づくりコーディネーターを務める。2013年に結婚を機に、むつ市に移住。2018年8月に合同会社むっつのたねを立ち上げ、代表社員に就任。まちづくりや食育活動などを担う。シェアオフィスとレンタルスペース「アクティブフィールドむっつのたね(仮称)」を準備中。

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