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青森県女性ロールモデル 事例10【山田 晴香さん】

自分の人生は自分でつくる
そのために自己投資は惜しまない

分野:起業

わとな株式会社代表取締役CEO
 山田 晴香さん(青森市)

チャレンジのきっかけは?

青森について学びたい
 あまり将来のことを考えることなく中学時代を過ごし、青森中央高校に入学しました。3年生になる頃には青森公立大学への進学を希望していたので、地域のために何かしたいという思いがありました。総合学科で、自分のやりたい分野を一人一研究する授業があり、その時にインバウンドにも興味があったので、外国人向けにウェブサイトを作りました。青森について学びたいという思いとウェブサイトを作った経験を武器に大学のAO入試に挑みました。無事に合格し、青森公立大学経営経済学部地域みらい学科に入学しました。

チャレンジのみちのり

ICTの利活用について学びたい
 大学では、ICT(情報通信技術)、インターネット関連の研究をしている木暮祐一准教授(当時)のゼミに入りたいと強く思いました。1年生からゼミが始まりますが、入学式後にくじ引きでゼミが決められてしまいます。幸運なことに希望しているゼミのくじを引き当て、他に入った二人の仲間も同じように希望が叶ってのことでした。この時出会った二人(澤田宇京さんと宮古沙紀さん)と後に起業することになります。
ゼミでは地域を知るためにフィールドワークで県内各地をまわりました。弘前さくらまつりを見に行き、外国人の方にアンケートをとったり、三内丸山遺跡や津軽金山焼のほかさまざまな観光施設などを巡っていたので、周りからは「お遊び」と言われたりしました。

好きなことでウェブサイトづくりに夢中に
 私は元々青森が好きで、周りの友だちは高校を卒業後に都会に出ていくことが多かったのですが、自分は絶対青森県内、青森市内という気持ちが強くありました。そうした時にフィールドワークで県内を巡り、四季折々の景色の素晴らしさなど青森の強みを再確認できました。仲間も同じことを感じていたようです。
 2年生になってからは、個々にやりたい分野が出てきて、澤田さんはドローン撮影、宮古さんはラスベガスで開催された電子機器の見本市CESに行って、知見を広め、私はホームページ制作に興味を持ち、自分でブログを作成するようになりました。ドメインやサーバーを自分で取得してカスタマイズすることに興味を持ち始めて、夜な夜なウェブサイトを作っていました。‘じょっぱり寝ブログ’と題したウェブサイトで好きな文房具を紹介していました。高校生の時に外国人向けにウェブサイトを作ったのが原点にあったのと、中学生くらいからデジタルで絵を描くことに夢中になっていたので、イラストも自分で描いて載せています。‘寝ブログ’とありますが、夜中にならないとやる気が出なかったことと、好きなことに夢中になって気がつくと朝になっていたということがしょっちゅうありました。

青森県をICTで活性化させたい、ならば自分たちで起業しよう
 ウェブサイト作りに夢中になりながら迎えた大学3年生の春。世の中は新型コロナウイルスが蔓延し始めていました。不要不急の外出や外食の制限が求められたことから、青森市内の飲食店も苦境に立たされていました。そんな中、テイクアウトできる飲食店情報を一元化した情報サイト‘あおもりテイクアウト’がスタートし、私たちゼミ生もサイト運営のお手伝いをすることになりました。‘あおもりテイクアウト’は、数多くのメディアにも取り上げられ、知名度のあるサイトになりました。
 仲間と分担して店舗情報を更新するほか、店舗向けのアンケートも取る活動をしました。この運営を手伝う中で、青森市の飲食店の中にはホームページなどで自分のお店の情報を公開していない、公開していたとしてもインスタグラムなどのSNSだけで発信しているところが多いことがわかりました。インスタグラムだとアカウントを持っている限られた人しか見られません。青森県はインターネット利用率が全国最下位というデータがありますが、店舗情報のアンケートを通して店舗だけでなく青森県全体がインターネットの活用に弱いことがわかりました。インターネットを見られる環境にあっても、青森県の情報を見るサイトがない、需要があっても供給がないということに気づいたので、それなら自分たちで青森の情報を集約したポータルサイトを作れば、需要に応えられると思いました。そのことが、‘Locoty青森’(青森市内を中心とした飲食店などの情報が検索でき、コラムやインタビューも掲載するウェブサイト)の始まりでした。それと同時に私が特にその時期にウェブデザイナーやフリーランスでの働き方に興味もあったので、「起業もしてしまおう」ということになりました。

わとな株式会社の設立
 大学生として日々を過ごしていくうちに、自分の力で稼いで働きたいという思いを抱くようになってきました。ゼミ活動では、地域創生のさまざまな活動に取り組んできましたが、そのような活動に責任を持ち、中心となって活躍したいと思いました。
 そこで、あおもりテイクアウトのサイト運営に携わっていた澤田さんと宮古さんと私の3人で、起業に挑戦することにしました。ゼミでは先輩たちが元々やっていたサイト運営の引継ぎなどが多く、いわゆるおさがりばかりで、自分たちでゼロから始めたプロジェクトや取組がありませんでした。限りある大学時代をもっと意味あるものにしたいと思ったので、自分たちでゼロから作って責任を持ってやりたいと思ったことも起業した理由です。
 9月初めから起業に関する勉強を始めて、11月6日に会社の登記が済みました。社名は‘わとな株式会社’としました。津軽弁で‘私とあなた’という意味です。私たち3人が全員青森県出身なので、地域に根ざした会社にしたいことと、津軽弁のやわらかい印象で平仮名がいいと思い、この名前にしました。

チャレンジしてみて

設立初日からSNS運用開始、3人で役割分担
 将来的に自分自身のスキルや力で稼いでいきたいと思っていたので、私が代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任し、澤田さんが取締役CCO(クリエイティブ責任者)、宮古さんは取締役CMO(マーケティング責任者)に就任したほか社外取締役が2名います。
 会社を設立したその日からLocoty青森のSNSを始めました。Locoty青森のサイトを運用するための準備段階としてSNSを毎日やっていこうということになり、活動がスタートしました。今年の4月から、Locoty青森のウェブサイトの運用も本格的に始まり、7月にはサイトのデザインを一新しリニューアルしました。運営は3人で役割分担しながら進めています。
 私はLocoty青森のほか、他サイトの運用についての依頼を引き受けたり、青森市と一緒にスタジオアウガというYouTube配信のほか編集業務や書類の作成をしています。宮古さんがLocoty青森に掲載するインタビューに行き、記事を書いたり、財務関係のことを担い、澤田さんがSNS担当でインスタグラム、ツイッター、フェイスブックで1日中ニュースを探して毎日発信しています。

在学中に起業することについて両親にプレゼン披露
 両親に「起業する」と打ち明けた時、はじめは「公務員じゃないのか」と言われました。そこで、自分の考えを理解してもらえるよう知識を身につけました。そこで改めて起業するというプレゼンを両親に向けて行ったところ、「若いうちは苦労しておいたほうがいい」と言い、「好きなことをやった方がいい」とも言ってくれました。最近では母がLocoty青森のインスタグラムを毎日楽しみに見ていて、「ちょっとここの文章間違っている」と教えてくれたり、「私も雇ってほしい」と言ったり、私たちの活動を応援してくれています。

この1年は実績を積む期間、4足の草鞋でステップアップを目指す
 起業してはじめの頃は、いわゆるご祝儀で仕事もよく入ってきて、それなりに仕事に追われ、売上も伸びていました。今は4月に公開したLocoty青森をしっかり運用する時期だと思っています。Locoty青森を通じて増えた出会いやつながりを売上に持っていけるようにしていきたいと思っています。
 ウェブづくりをもっと突き詰めたいと思ったので、ウェブスクールにも通っています。ウェブ制作の依頼が来ていることもあり、もっと専門的にウェブデザインのスキルを身につけ、将来的にはウェブデザイナーとしても稼いでいけるようにしたいと思っています。大学1年生の時から小売店で接客のアルバイトをしていて、大学にも行き、会社で代表取締役もして、専門スクールにも通うという、4足の草鞋を履いている状態です。起業してからフットワークが軽くなったと感じています。
 今は、大学生というブランドがありますが、卒業と同時にそれはなくなります。そのために、わとな株式会社のブランディングをしっかり行い、大学生というブランドが剝がれてもわとな株式会社一つで確立できるようにこの1年実績を積んでいこうと思っています。

社会人のマナーは学びながら実践、つながりを活かす
 この仕事は、パソコンがあればどこでもできるのですが、事務所として空き家を借りています。スタートアップしたばかりでしかも3人とも大学生で社会に出たことがないとなると、会社の運営やさまざまなことを話し合って決めていかなければならないことが多くあり、実際に集まって話し合い、一日中事務所で作業もするようになりました。間もなく決算期を迎えますが、税理士さんに相談しながら会計の作業を進めています。
 起業してから人とのつながりが増え、その大切さを実感しています。今まで大人の人と話すのは大学の先生くらいでしたが、起業してからは会社の社長をされている方々に取材することやお会いする機会が多くなったので、マナーなどを学びながら実践する日々です。言葉遣いなどもその都度調べるようにしています。小売店で接客業のアルバイトもしているので、敬語などはしっかり身についてきたと思いますが、まだまだ勉強が必要です。

インターンシップの経験が分岐点に
 起業する以前、就職するなら漠然とIT企業だろうなと思い、県内のIT企業で半年間インターンシップを体験しました。そこで働いてみて、漠然とIT企業に就職するのではなく、専門的な知識と技術を身につけた大人になりたいのだと気がつきました。しかもその技術を身につけたら企業に属する必要はないのではないかと思い、興味のあるウェブデザイナーを突き詰めようと思いました。インターンシップへの参加が、自分の今後を考える大きなきっかけになったと思っています。その時にウェブ制作の業界に興味を持ち、その道に進もうと決意しました。大学ではそうした専門的なスキルは学んできませんでしたが、望んでいたゼミに入り、先生との出会いから興味のあるICT分野を知ることができ、それが分岐点になっていろいろな経験を経て今につながっていると思います。

チャレンジしてみて

‘自分の人生は自分がつくる’ことと‘自己投資は惜しまない’
 ‘自分の人生は自分がつくる’ということと、‘自己投資は惜しまない’ことを常に心がけるようになりました。特に青森では学生の起業家は少なくて、誰しもが肯定的な意見を持っているわけではありません。何事にも言えることですが、何をするにも最終的に決定権は自分にあり、責任は自分で背負います。ならば、やりたいことはとことんやってみるべきだと思います。挑戦する中で、発見や出会いがたくさんありました。また、自分が成長するために必要なコストは惜しまずに投資しています。「○○がないからできない」などと、自分の発展途上の理由を何かのせいにしたくないからです。

青森にいてクリエイティブに好きなことを続ける、逆境も楽しむ
 1度は田舎から都会に出て、田舎の良さを再確認したほうがいいと多くの人が言っていますが、私はこの時代ならずっと田舎にいたとしても、都会と田舎の良さを知ることができると思います。私はずっと青森にいたいです。私は自然が好きなので、田舎の心地よさを感じながら、インターネットを使って活動していきたいです。最近、高校の同級生などで早い人だと結婚、出産をしている人もいます。私はこれからどんどん働きたいのと、家事は苦手なので、家事ができる男性といつか結婚できればいいなと思っています。そして、絵を描いたり、サイトを作ったり、何かを生み出すことが好きなので、クリエイティブなことをしていきたいと思います。
 最近、逆境も楽しめるようになりました。タスクがどんどんたまっていっても、そのタスクを喜べるようになろうと思っています。「あれもこれもやらないと!」と追い込まれないように、やれることを喜んでやろうと思います。メンタル面も起業してから強くなったと思います。

これからチャレンジする女性へメッセージ

人生は一度きり、やりたいことをやって、責任も自分で負う
 青森県は、女性の経営者が多いというデータがあります。夫や父の他界による事業承継が主な理由という背景がありながらも、青森県の女性は活気があって皆を先導していく方が多いように感じられます。女性が仕事で活躍したり、経営者になることは今の時代、珍しいことではなくなりました。この時代背景を武器に、やりたいことをやってみるのが良いと思います。
 人生は一度きりなので、やりたいことをやって、失敗しても、その失敗を失敗として語れるようになれば、それが自分の糧になると思います。
 また、今はコロナ禍もあって、副業(複業)も可能な時代になりました。働き方は多種多様であるので、周りに流されずに生きるのが人間らしい生き方かなと思います。
(令和3年4月取材)

【プロフィール】
青森県青森市出身。青森県立青森中央高等学校卒業。青森公立大学経営経済学部地域みらい学科4年在学中。2020年11月、同大学に在籍する同級生2人とともにわとな株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。

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